釣り

IT・釣り

斉藤 翔さん

地方なのに“ほぼ揃ってる”。八戸の余白に沼ったリモート社長

「都会には何でもある」けど実はなにもない
――八戸の余白で暮らしが動き出した話

Q:斉藤さんは東京から青森・八戸に移住されたそうですが、生活がガラッと変わったそうですね。移住してから、まず何を始めたんですか?

ええと……結構あります(笑)。
大きく分けると、外で遊ぶのと、家と暮らしを作るのと、作って残すのが一気に増えました。
まず外だと、釣りですね。こっち来てから完全にハマって、動画もずっと上げてたら、いつの間にかYouTubeが登録者2.5万人になってました。あと、キャンプとか車中泊でふらっと出るのも増えました。
家まわりは、DIYが止まらなくて。最初は家具をちょこちょこ作ってただけなんですけど、だんだん「デッキ欲しいな」とか「作業する場所欲しいな」とか言い出して……気づいたら作業小屋まで作ってました。畑も、未経験なのに勢いで100㎡くらい触り始めて。
作る系だと、木工は椅子とかソファーみたいな大物もやるし、皿みたいな小物も作ります。レザークラフトや電子工作もやってて、これは今フリマアプリなどで販売もしてます。
あと、やってる途中で「これ、ちゃんとやるなら資格いるな…」ってなって、DIYのために第二種電気工事士を趣味で取りました。釣りのために船も行けたら面白いなと思って小型船舶免許も取ったんですけど、これは正直、まだほとんど使ってないです(笑)。

それと、なぜか学び直しも始まって、数学をやり直したり、リモートで東大大学院の工学系の講座を受講したり……。
…今こうやって言うと、自分でも「広げすぎだな」って思いますね。

Q:ちょっと待ってください、今の「広げすぎ」のレベルが普通じゃないです。
話が前後しますがそもそも、どういう経緯でこちらに来られたんですか?

もともとは東京で、口コミをもとに店舗の情報を整理して届けるようなサービスをやるITスタートアップを運営していました。
コロナをきっかけに、思い切って会社をフルリモートにしたんですよ。なので今は社員もみんな地方に散らばって暮らしていて、数年に一回くらい都内で集まって懇親会する、みたいな距離感です。
それで、フルリモートになったタイミングの東京が、個人的にはけっこう息苦しく感じて。
「どこでも働けるなら、暮らしも変えようか」と思って、妻の地元である青森・八戸に移住することにしました。

住んでる場所は、よく言うと自然が近くて、悪く言うと……森の中にポツンみたいな感じですね。木も畑もあって、散歩すると拾えるものがある。都会とは、生活の手触りがまるで違います。 

Q:なるほど。フルリモートがきっかけで青森・八戸へ、しかも森の中にポツン…! それがどうして、さっきの“行動量”につながったんですか?

いちばん大きいのは、物理的な制約が一気に減ったことだと思います。
東京にいた頃も「やりたいこと」は多分あったんですけど、始める前に頭の中でブレーキがかかるんですよね。置く場所どうする、近所に迷惑かな、移動が面倒、道具どこにしまう…みたいな。
こっちに来ると、そのブレーキがそもそも少ない。
買っても置けるし、作っても置けるし、車でさっと動ける。人目も音も、気にしなきゃいけない場面が都会よりぐっと減る。だから「思いついたら試す」ができるようになりました。そもそも都会だと、車を持っていない人も多いし、車が前提じゃない。車がない時点で、何をするにも「どうやって行こうか」「どうやって運ぼう」から始まります。ホームセンターで家具を買ってもレンタカーを借りて家に持ってくる、みたいなめんどくささがある。なので、手に持てない荷物は通販中心になりやすいんですよね。

あともう一つは、自然が“コンテンツとして強すぎる”ことですね。
人がいない景色が普通にあって、食も遊びも、わざわざ「体験しに行く」んじゃなくて日常の延長で触れられる。これ、慣れると当たり前になって見えなくなるんですけど、実はものすごい価値だなって。

Q:なるほど…“制約が減る”のは分かりやすいですね。
でも、地元の人って逆にそれが当たり前すぎて、価値に気づきにくいじゃないですか。斉藤さんは、どうやってその価値に気づけたんですか?

正直、いちばん大きいのは「外から来た」ってことだと思います。
地元の人にとっては普通の景色とか、普通の距離感とか、普通の静けさって、ずっとそこにいると“背景”になっちゃうじゃないですか。

でも東京から来ると、まずその“普通”が全部、異常に贅沢に見えるんですよ。
「この景色が日常なの?」とか、「この距離で海も山も行けるの?」とか、「音を気にせず何か作れるって、こんなに気が楽なの?」とか。

気づきって、頭で理解するというより、身体が先に反応する感じでしたね。

Q:その“外から来た目”って、移住したからこそ持てた視点にも聞こえます。
でも、地元にずっといる人が、同じように価値に気づく方法ってあると思いますか?

地元の人にも、これってできると思っていて。引っ越さなくてもいいから、一回だけ“外から来た目”になってみてほしいんですよ。
東京って、何でもあります。お店もサービスも選択肢も多い。

でも逆に言うと、増えるのは「選択肢」であって、「場所そのもの」じゃないんですよね。
こっちにあるのは、店じゃなくて、場所です。

人がいない景色とか、静けさとか、海までの距離とか、匂いとか、星とか。あれって、買えないし、並べ替えもできない。
だから「何もない」って言い方を聞くと、ちょっと違うなって思います。“何もない”じゃなくて、“元からあるものが強すぎて見えてない”だけで。

Q:なるほど…東京は何でもあるけど、「場所」は増えない。
じゃあ、地元の人が“外から来た目”になるには、どうしたらいいと思いますか?

一番いいのは、やっぱり自分の育った環境からとにかく遠いところに行ってみることですね。旅行でも仕事でも何でもいい。理想は海外です。海外って、価値観も生活の前提もごっそり違うから、「自分が当たり前だと思ってたもの」が一回ぜんぶ剥がれる感じがあるんですよ。
ただ、現実はお金も休みも必要だし、家族のこともあるので、難しければまず国内でも“遠い場所”で十分だと思います。

次にできるのは、外から来た人と接すること。移住者でも旅行者でも、地元以外の人って価値観が違うことが多いので、その違いに触れるだけで「え、そこが魅力なの?」って気づきが起きやすいです。
それも難しいなら、もっと手軽な方法があって。
都会に住んでる知り合いにこう聞くんです。
「まず自分の車があって、混んでない道でどこへでも行けて、物も道具も気兼ねなく運べて置けて、人目や音を気にせず自然の近くで遊べるとしたら、まず何がしたい?」って。
それを聞くと、こっちは「え、いま自分が持ってる条件って、そんなに強いんだ」って分かる。地元の価値を、外の目で一瞬だけ照らしてもらう感じですね。

Q:地元の価値に気づくことが、まず一番大事だと。最後に、八戸の人に一言で伝えるなら何ですか?

一言で言うなら、「八戸って、地方なのに“暮らしがほぼ揃ってて”、しかも余白があるんですよ」です。
田舎って言われ方をすることもあるけど、正直ぜんぜん違って。
生活に必要なものはだいたい揃うし、困る感じがあまりない。ちゃんと街として成立してるんですよね。
そのうえで、ちょっと走れば海も山も近いし、景色も食もアクティビティも、場所そのものが強い。しかも混んでない。
都会みたいに選択肢が無限にあるわけじゃないけど、“生活の不便さ”より先に、“場所の強さ”が来る感じがある。これ、外から見るとかなり贅沢です。

でも、ずっといると見えなくなる。慣れちゃう。
だからまずは、いま自分がいる場所の価値をちゃんと実感してほしい。
「何もない」じゃなくて、「揃ってる上に、余白もある」っていう強さがある。

気づいたら、あとは早いです。
大げさな計画はいらなくて、今日の午後でもいいから、一回その“八戸の強さ”に飛び込んでみる。
それだけで、見えるものが変わると思います。

もっと知りたい方へ(活動リンク)

斉藤 翔さん

オトコロドットコム株式会社
https://otokoro.co.jp/

お仕事関係なく、もっと八戸を満喫したいので釣りや畑のプロフェッショナルの方がいらっしゃったら是非ご紹介いただきたいです…!

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